【第165回】あったかいを漢字で表すと「温ったかい」になるのか

そこまで口語にこだわりたければ一考。

事の発端は、新聞に載っていた「あったか言葉」でした。
一瞬、「忘れていたっけ、その言葉が“あったか”」的な意味だと思ったら、「温かい言葉」という意味らしいですな。
ただ、「温か言葉」と書くと「あったか」と読んでくれないので、あえてひらがなにしたと思われます。
   
「あったか」は口語的ですから、書く機会そのものが少ないんでしょう。文字としては、あまり見かけません。
でも、言うは言いますよね。「きょうは、あったかいね」とかなんとか。
なるほどね。そんな会話をテキストにしなくちゃいけない場合、ひらがなにするしかないんですな。
   
あったかい食べ物
言わずもがなの茶濁画像でございます
   
ついでに、Web上で用例を拾ってみることにしました。
そしたら、「温ったかいの何でか」という商品があるんですよ。
防寒対策グッズで、カプサイシンを含む成分がスプレーされるそうです。
「温」という漢字がもつイメージを上手に利用していますよね。
ちなみに商品名は固有名詞なので、なにをやってもOKです。正誤を問う話じゃありません。
ただし、これを見て、「平文でそう書いてもいいのか」と思われたら困りますけどね。
そもそも、「暖ったかいの何でか」じゃねぇかって気がしますが、固有名詞は無敵なので、「ウチはそうなのだ」と言われたらそれまでです。
   
待てよ、「温」でもいいのか。
「温」と「暖」の別は、対義語で見分けるのがコツです。
「冷たい」の対義だったら「温」で、「寒い」の対義語だったら「暖」。
つまり、衣服にスプレーして「冷たく感じさせない」のであれば、「温」が正解です。
話が飛びました。
   
漢字を用いた「温ったかい」の是非ですが、固有名詞や詩的表現ならアリ。
そして、冒頭の「あったか言葉」のように、ひらがながもつフンワリとした雰囲気を生かすのも手法なんだと。
ただし、一般的な平文では「あったかい」・・・というか、状況が許すなら「温かい」推奨。
そうですよね。「忘れ物はあったかい?」的な読み方をされかねないので、なるべく使わないに限ると思います。

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