【第31回】新聞の事例研究−その5−「すぎない」のひらがな用例

食べすぎない、食べ過ぎない。デマにすぎない、デマに過ぎない。

彼の言っていることは、脅しにスギナイ
   
このような場面で「過ぎない」という漢字を使ったりしますが、よく考えてみると、なぜでしょうね。
一定レベルにとどまっているという意味で、「過ぎない」なんでしょうか。
効き過ぎない薬・・・なんて表現もありますから、脅し過ぎない、脅しに過ぎない、ということなのかもしれません。
   
ちなみに、「効き過ぎない」などの複合動詞では、主たる意味の「効き」を漢字にして、副詞的用法の「過ぎない」をひらがなにすることがあります。
お越しいただく(頂く)
走りはじめる(始める)
飛びだす(出す)
なども同様ですね。このようなケースは、いままでも見てきました。
   
一方、「脅しに過ぎない」は複合動詞ではありません。
「過ぎない」だけが単独の動詞。
ところが・・・。
   
副詞的な「すぎない」のひらがな用例
某日の読売新聞
   
表記揺れという意味では、納得のできるワーディングだと思われます。
つまり、「脅しすぎない」と「脅しに過ぎない」の違いを統一していきましょうということなんです・・・たぶん。
複合動詞の用例に倣う感じで、ひらがなをデフォとする。
うーん、これまた、やっかいなことをやってきましたね。
   
あるいは、「過ぎる」の使用場面を、「オーバーする」の意味に絞るということも考えられます。
二義を防ぐ手法なんですが、冒頭の語源・・・仮に合っているとして・・・からすると、「オーバーする」の範囲内という気もします。
まあ、いずれにしても、副詞ニュアンスの場合はひらがななんでしょう。
   
複合動詞ではなく、単独の動詞で副詞ニュアンスって、ほかにどんなものがあるでしょう。
・・・そうそう、「得る」がありました。
起こり得る、やむを得ない、せざるを得ない。
「起こり得る」は複合動詞ですから「起こりえる」ですね。
問題は「やむを得ない、せざるを得ない」のケースで、これを「証にすぎない」の用例に倣うとしたら、「やむをえない、せざるをえない」なんでしょう。
ちょっと、抵抗感あるな。
難しいですね。暫時、保留。
とりあえず「すぎない」だけはデフォ化。

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